アルファのブログ

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自炊PDFを第3世代iPadに最適化する

2012-03-25作成

(→その1、その2その3その4)

ScanSnap S1500で紙の本をPDF化(いわゆる自炊)するときは、常にカラーでスーパーファイン(300dpi)の設定にしています。ただし、これをそのまま読書端末のiPad 2に入れると無駄に解像度が高すぎるし、そもそも800冊以上あるオリジナルのデータを全部あわせると70GB近くなり、そのままでは64GBモデルにも全部は入りきりません。

そこで、Acrobatの「ファイルサイズを縮小」で解像度を150dpiに落としたものをiPad 2に入れて持ち歩いていました。これだと総データ量は20GB程度になり、読みやすさとデータサイズのバランスはピカイチ、と大変満足していました。そう、あの「新しいiPad」を手に入れるまでは……。

Appleが2012年3月16日に発売を開始した第3世代のiPadは、ピクセル数がこれまでの4倍、1536×2048pxにもなり、その画面の綺麗さは圧倒的です。高解像度データを表示させたときの印象はまさに紙そのまま。A5判単行本の見開き表示やA4変形判の雑誌などであっても、キリッとした文字で一切拡大せずにらくに読み進められます。他の機械のことはあんまり知りませんが、自炊書籍のリーダーとしては現時点で世界最強です、たぶん。

しかし、その新しいiPadで150dpiのモヤッとした自炊PDFを目にしたときの残念感もまたひとしおです。なんというか、本来の性能を発揮できてないもったいなさが軽い罪悪感にまで高まって、もうなんとかせずにはいれらない感じ。じゃあ持ち歩く本を絞って300dpiのデータを入れればいいじゃないかと思うかもしれませんが、常に全部持ってるという満足感もまた捨てがたく、それはそれで譲れなかったりするわけです。

となると、なんとかその間の妥協点を探るしかありません。解像度をなるべく高めつつ、データ量を抑えるにはどうするか。判型が大きい本の最大画素数を1536×2048pxに切り詰めて、圧縮率を高めに取るしかないだろう。圧縮率はある程度高くしても見かけはそんなに変わらないことが分かっているし──。

というわけで、前置きが長くなりましたが、噂は聞いてたけど使ったことはなかったChainLPというソフトを使って、第3世代iPadに最適なPDFを作れるかを試してみましたので、その結果をメモしておきます。

大きい本の場合

素材として、A4変形判(約205×279mm)で196ページの雑誌データを使います。ファイルサイズは101MBです。300dpiでの画素数は2450×3300pxぐらい。150dpiでは半分の1225×1650pxになってしまうので、iPadの1536×2048pxに届かずアップスケールされてしまうのがモヤット感の原因です。ほんとに広大ですね、新iPadの画面は。150dpi版のファイルサイズは40MBです。

まずは何も考えずに画素数の変更だけおこなってみます。ChainLP.exeを起動したら、出力を「pdf」に、サイズを「1536×2048」にします。メニューバーの「ファイル」→「圧縮ファイルを読み込む」で、元になるPDFを読み込みます。「出力」ボタンを押すと保存ダイアログが出るので、保存先やファイル名を指定して「保存」を押します。

2分ほどで♪チャランという音が鳴って変換が終わりました。ファイルサイズは84MB。オリジナルの101MBからは2割ほど減っていますが、150dpi版の40MBに比べるとまだかなり大きいです。iPadで表示させると、細かい文字の精細感はほぼオリジナルと同じで文句なし。また、i文庫HDでのページスクロールがとっても高速になりました。早送りボタンで全ページスクロールするのに、オリジナルは4分45秒(これでは実用にならない)、150dpi版で1分30秒かかっていたのが、最適化版では45秒でした。画素数の変換がないのが効いているのでしょう。2ページの見開き表示だとそこまで差はつかなくて、オリジナルは2分11秒、150dpi版と最適化版はともに1分44秒でした。

デフォルトのままの設定では細かい問題がいくつかありました。まず、現物は本文横書きで左開きの雑誌なのに、右開きになってしまってること。これは綴じを「左綴じ(英文や横書きの本)」に設定することで解決。次に、一部のカラーページがグレースケールになってしまっていること。ページの一覧で「絵」の欄にチェックが入っていないページは「本文」の設定が適用されるため、グレースケールになってしまいます。これは、一覧のページをすべて選択して右クリック→「挿絵」で全ページにチェックを入れることで解決。設定を挿絵にするとデフォルト設定では余白除去が効かなくなりますが、私の場合は余白も含めてオリジナルを再現したい方なので問題なし。別の方法として、詳細設定の「ファイル入力設定」タブで、「PDF入力設定」の「カラーページを挿絵にする」をチェックしておくと、スキャン時にカラーに設定していればそれがそのまま引き継がれるようになります。私のように100%カラー派の場合は「全て挿絵にチェックする」を有効にしておくのでもOKです。

ファイルサイズですが、84MBは大きすぎるので、JPEGの圧縮率をもう少し高めてみます。詳細設定の「画像設定」を開くと、本文・挿絵とも「クオリティ」が80になっていました。これを50にしてみたところ、54MBまで小さくなりました。さらに30にすると、41MBまで小さくなりましたが、さすがに文字は大分ざらついた感じになります。150dpi版(40MB)よりは多少高精細だけど、Retinaディスプレイの性能は生かしきれてない感じ。綺麗さとデータ容量のバランスがとれているのは50ぐらいだと思います。

小さい本の場合

では、文庫本のようにオリジナルデータでもiPadの画素数を下回っているようなものを、iPadの1536×2048pxにあわせて変換することには意味があるでしょうか。

それを確かめるため、こんどは502ページの文庫本(A6判、105×148mm)のデータで試してみます。オリジナルは約1210×1860pxで77MB。150dpi版は約605×930pxで39MBです。

さっきと同じ設定(JPEGのクオリティは50)で1536×2048pxに変換すると、ファイルサイズは89MBに増えてしまいました。これでは意味がありません。また、このファイルをi文庫HDで見開き表示にすると、上下左右に余白がついた額縁表示になってしまいます。これは、全画面の1ページと見開きの1ページでは縦横比に差があるためです。

判型の小さい本の場合、新iPadでは全画面表示にする必要がほとんどないので、最初から見開き前提の画素数にしてみるとどうでしょうか。

そこで、今度は出力サイズを1024×1536pxにしてみました。すると、見開き表示での精細感は非常に高いにもかかわらず、ファイルサイズは57MBに抑えたデータができました。このあたりが最適解像度ではないかと思います。

結論

結論としては、オリジナルがA5判(148×210mm、300dpiで1748×2480px、150dpiで874×1240px)ぐらいまでなら、見開き前提で1024×1536pxにリサイズ、それ以上の判型なら1ページ表示の前提で1536×2048pxにリサイズし、JPEGのクオリティは50に設定する、といったあたりが第3世代iPadには最適な設定ではないかと思います。

ChainLPには、複数ファイルを同じ設定で連続処理してくれるBatchLP.exeも付属していて、寝る前に仕掛けて朝起きたら変換が終わっているというような使い方もできるので、これから何日かかけてデータを料理してみたいと思います。

(→その1、その2その3その4)

※バージョンメモ