前回、CMMIの連続表現と段階表現は何が違うかという話を書きましたが、GGとGPに触れなかったのが心残りなので、その話をもう少しだけ続けます。

前回の話を簡単におさらいすると、CMMIの連続表現とは、その組織の開発のやり方を22の領域(プロセス領域、PA)ごとに個別評価したもので、領域ごとに0~3のレベル(能力レベル、CL)で表すもの、一方 段階表現とは、その組織の開発のやり方を総合評価したもので、全体を1~5のレベル(成熟度レベル、ML)で表すものでした。

で、早速ですが、CMMIでよく出てくるGGとは一体なんでしょうか。言葉としてはGeneric Goal(共有ゴール)の略ですが、そんなこと言われても全然イメージ湧きませんよね。

GGとは、実体としては個別評価のレベルと同じものです。ただその表現をちょっと変えて、全領域に共通の目標はこれ、という形にしてあるだけです。

個別評価の0~3のレベルは、こんな感じでした。

  • レベル0: その領域の目標のなかに、達成できていないものがある
  • レベル1: その領域の目標は全部達成できてるけど、やり方がちゃんと決まってなくて、時間が経つとまた達成できなくなる
  • レベル2: その領域の目標は全部達成できてて、やり方もプロジェクトごとにはだいたい決まっているけど、他のプロジェクトに行くと流儀が変わる
  • レベル3: その領域の目標は全部達成できてて、やり方も組織全体の決まりがあって、プロジェクトごとにここは変えてもいいよという箇所が決まっている

これをGGとして言いかえると、こんな感じです。

  • GG1: その領域の目標を全部達成すること
  • GG2: その領域のプロジェクトごとのやり方を決めること
  • GG3: その領域の組織全体のやり方を決めて、プロジェクトごとにここは変えてもいいよという箇所を決めること

CMMI文書ではもっと持って回ったいいかたをしてますが、真意はこういうことです。そして、

  • GG1すら達成できてなければレベル0
  • GG1が達成できてればレベル1
  • GG2が達成できてればレベル2
  • GG3が達成できてればレベル3

という対応にしているわけです。CMMI-DEVがV1.2からV1.3になったとき個別評価のレベル4と5が削除されましたが、それとあわせてGG4とGG5が削除されていることからも、両者が実は同じものであることがわかります。

各領域の目標(SG)に対して、それを達成するためにはこういうことをやるのがいいよというノウハウ(SP)が示されていたように、GGに対してもそれを達成するためにはこういうことをやるのがいいよというノウハウが示されていて、それがGP(Generic Practice、共有プラクティス)です。例えば、GG2「その領域のプロジェクトごとのやり方を決める」ためには、

  • GP2.1: まず方針を決めろ
  • GP2.2: 方針に従って計画を立てろ
  • GP2.3: 計画を実行する人を決めろ
  • GP2.4: その人に仕事を割り振れ
  • GP2.5: 必要ならその人を教育しろ
  • GP2.6: できあがったものをチェックしろ
  • GP2.7: 関係者も巻き込んで見てもらえ
  • GP2.8: 決められたことやってるか日々監視しろ
  • GP2.9: 決めたやり方に従ってるか客観的に評価しろ
  • GP2.10: もっと偉い人にも状況を把握してもらえ

ということがやれてたら目標達成、という感じです。

ここまでは個別評価のレベルの判定基準の話でしたが、ついでに総合評価のレベルの決め方にも触れておきます。

総合評価の2~5のレベルには、22の領域が

  • レベル2に7個
  • レベル3に11個
  • レベル4に2個
  • レベル5に2個

という具合に割り振られています。まだなんの活動もしてない組織でもレベル1から始まるので、レベル1には何も割り振られていません。で、

  • レベル2の7個の領域の個別評価がぜんぶレベル2(つまりGG2を達成)なら、総合評価はレベル2
  • レベル2と3の18個の領域の個別評価がぜんぶレベル3(つまりGG3を達成)なら、総合評価はレベル3
  • レベル2と3と4の20個の領域の個別評価がぜんぶレベル3(つまりGG3を達成)なら、総合評価はレベル4
  • レベル2と3と4と5の22個(つまりぜんぶ)の個別評価がレベル3(つまりGG3を達成)なら、総合評価はレベル5

という風に判定します。

これって前回説明した個別評価の結果を総合評価のレベルに変換する方法と同じじゃないの? と思われた方は鋭い、まさにその通りです。

つまり、「現在の成熟度レベル」が知りたい、という場合は、連続表現で測ろうが段階表現で測ろうが、評価方法も結果も同じになるのです。(この傾向は、V1.3で一層顕著になりました)

一方、これから徐々にレベルを上げて行こうという場合は、両者に違いが出ます。連続表現の場合、まずは強化したいプロセス領域を選んでから、それぞれの目標の能力レベルを決めて、改善を始めます。狭く深くを繰り返していってもいいですし、広く浅くでも、あるいはその中間でも構いません。段階表現の場合は、まずは目標の成熟度レベルを先に決めます。そうすると自動的に領域と能力レベルが決まるので、それに向って改善を始めます。つまり、連続表現と段階表現の違いとは、「表現」なんて言いながら、実は改善へのアプローチの違いなのです。

※バージョンメモ

  • CMMI-DEV V1.3