iPhoneにフィンランド語の辞書を入れられたらいいのになあ。けど、AppStoreには会話集とか単語集しかないし、EPWING版のフィンランド語辞書なんてのも見たことないし。……とぼんやり考えていたときに、ふと、ウチには三修社の12か国語大辞典というのがあって、確かフィンランド語も入っていたはず、というのを思い出しました。

大昔に買ったこの「三修社 12か国語大辞典」というのは、日本語・英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・オランダ語・デンマーク語・スウェーデン語・フィンランド語・ノルウェー語・中国語の辞書が全部で18冊収録されたCD-ROMで、帯に「多言語クロス検索辞書の決定版!」なんて文句が踊っています。ですが、専用の検索ソフトをPCにインストールしなくてはならず、しかも動作が遅く、英語を軸にしたクロス検索もあんまり実用的ではなくて、ちょっと試してすぐ投げた、という記憶があります。

ただ、収録されている辞書はいちおう紙でも出版されているもので、もしこのデータだけ取り出してEPWINGに変換できればiPhoneのEBPocketでも使えるのに、と思ってググったら、ちゃんとあるんですね、コンバーターが。Inoue N.さんが作成された「CDWord-EPWING辞書コンバータ CDW2EPW Version 1.1」というのがそれ。以下は、早速試してみたときのメモです。

まず、上記のページからプログラムをダウンロードし、zipを適当な場所に展開します(ここではc:\cdw2epwとします)。コマンドプロンプトを立ちあげて、展開したcdw2epw.exeがあるディレクトリをPATHに加えます。この状態で「cdw2epw -v」と打つと、辞書番号の一覧が表示されます。今回EPWINGに変換したいフィンランド語の辞書は31番と32番の2つです。

C:\>set path=%path%;c:\cdw2epw

C:\>cdw2epw -v
 1: Grupo Anaya English-Spanish         23: Brandstetter Sci and Tech Eng-Ger
 2: Grupo Anaya Spanish-English         24: Gendai Publishing English-Chinese
 3: Nicola Zanichelli English-Italian   25: Harrap Business English-French
 4: Nicola Zanichelli Italian-English   26: Harrap Business French-English
 5: Nicola Zanichelli En-Ge-Fr-It-Sp    27: Kunnskapsforlaget English-Norwegian
 6: Wolters-Noordhoff English-Dutch     28: Kunnskapsforlaget Norwegian-English
 7: Wolters-Noordhoff Dutch-English     29: Gyldental English-Danish
10: Harrap Science English-French       30: Gyldental Danish-English
11: Harrap Science French-English       31: Werner English-Finnish
12: Harrap Shorter English-French       32: Werner Finnish-English
13: Harrap Shorter French-English       33: Esselte English-Swedish
14: Harrap Concise English-German       34: Esselte Swedish-English
15: Harrap Concise German-English       35: NTC American Idiom Dictionary
16: 三修社 科学技術英独日辞典           36: 研究社 新英和中辞典
17: Brandstetter Sci and Tech Ger-Eng   37: 研究社 新和英中辞典
18: Sanshusha Japanese-English

EPWINGを出力する空のディレクトリを作成してから(ここではc:\finnishとします)、光学ドライブにCD-ROMを入れ(ここではDドライブ)、変換したい辞書の番号、変換元データのパス、変換後データのパスを指定してcdw2epwコマンドを実行します。

C:\>mkdir c:\finnish

C:\>cdw2epw 31 d:\ c:\finnish
書籍名: Werner English-Finnish
索引を変換中... 100%終了 (15707件)
本文を変換中... 100%終了 (15662項目)
索引を更新中... 100%終了
候補リストを更新中... 100%終了
外字を変換中... 100%終了

C:\>cdw2epw 32 d:\ c:\finnish
書籍名: Werner Finnish-English
索引を変換中... 100%終了 (10364件)
本文を変換中... 100%終了 (10370項目)
索引を更新中... 100%終了
候補リストを更新中... 100%終了
外字を変換中... 100%終了

これでc:\finnishの中にEPWINGの辞書が出来上がりました。

img

あとは、以前「iPhoneにEPWINGの辞書を入れる」に書いた手順でiPhoneのEBPocket for iOSにFTPします。EBPocketで辞書グループの設定などをして、いざ検索してみると……。

あれ?? なんかウムラウトが付く単語が全然出てきません。たとえば、päiväを調べようと思ってpäiväと入力しても、ヒット0件になってしまいます。ウムラウト無しでpaivaと入力しても同じです。単語自体が収録されてないのかと思ってずーっとスクロールして探してみると、ありました、見出し語としてはちゃんと存在しています。ということは、もしかしてウムラウト付きの語を検索する方法がない……!?

答えはCDW2EPWのマニュアルにちゃんと書かれていました。結論だけいうと、åäöの3文字は、辞書のインデックスを作るときにJIS X 0208の範囲の文字に無理やり置き換えちゃってるので、検索するには次のように入力する必要があるとのことです。

  • å → Α(ギリシャ文字の大文字のアルファ)
  • ä → α(ギリシャ文字の小文字のアルファ)
  • ö → ο(ギリシャ文字の小文字のオミクロン)

そこで、pαivαと入力して検索してみると、確かに出ました。なるほどー、そういうことか。

img

ちなみに、フィンランド語-英語の辞書で”päivä”の記述はこんな感じ。一見して分かるとおり、ウムラウト付きの文字はビットマップの外字になっていて、周りの文字からはかなり浮いて見えます。うーん、これはなんとかならんもんか……。あと、なんか途中から全部太字になっちゃってますね。

img

英語-フィンランド語の辞書だと、たとえば”day”の記述はこんな感じです。

img

で、hishidaさんの「EB series support page」を眺めていたら、外字については、その辞書用の「外字Unicodeマップ」があればUnicodeの文字に置き換えて表示させることが可能、またウムラウトやリング付き文字の検索についても「Unicode検索置換ファイル」があれば、普通にäを入力したらäを検索する、ということができそうな雰囲気です。ただ、今のところ「12か国語大辞典」用のマップは誰も作っていないみたいで……。うーん、そうなると、これは自分で作ってみるしかないかなあ。

※「12か国語大辞典の外字マップ」に続きを書きました。

※バージョンメモ

  • Windows XP Professional SP3
  • CDW2EPW 1.1
  • iOS 6.1
  • EBPocket Professional for iOS 2.14