ベルギービールで有名なMaredsousは、カタカナだと「マレッツ」と書かれるようです。でも、どうしてこの綴りがこんな読み方になるのでしょうか。

結論から言うと、「原語を耳で聞いたとおりに書いたらこうなった」ということだと思います(たぶん)。Americanをメリケンと読んだり、Hepburnをヘボンと読んだりするのと同じです。

フランス語では「ou」は「ウ」と発音します(rouge ルージュ、とか)。また、末尾の「s」は発音しません(Paris パリ、とか)。いろんな人の発音を集めたHowToPronounceというサイトにMaredsousの実際の発音があったので聞いてみると、この規則通り、前半「Mared」は「マレッド」、後半「sous」は「スー」と言っているように聞こえます(IPAで書くと[maʁed.su]かな)。何も特別なところはありません。なので、一般的な外来語のように、やや原綴りに引きずられたカタカナ表記をするなら「マレッドスー」といったところでしょうか。

ただ、この単語が少し速めに発音されると、[d]と[s]が近づいて破擦音[ds]あるいは[ts]のようになりますし、フランス語では母音の長短の区別もありませんから、「マレ(ッ)ヅ(ー)」「マレ(ッ)ツ(ー)」あたりの表記はどれも妥当そうです(カッコ内はあってもなくてもいい、という意味です)。その中で、誰かが使った「マレッツ」が徐々に広がり一般的になっていった、というあたりが事の真相ではないでしょうか。